みんなの小さな光

変わりゆく日常で守り続けた小さな習慣の光

Tags: 習慣, 日常, 心の支え, 小さな希望, 回復

体調が優れない時期というのは、それまで当たり前だった日常が、音を立てて崩れていくような感覚を伴うことがあるかもしれません。朝起きて、仕事に行って、食事をして、人と話して、夜眠る。そうした一連の流れが途切れ途切れになったり、まったく別のものに変わってしまったり。

崩れゆく日常の中で

多くのことが思うようにできなくなると、焦りや不安、そして自分自身への不甲斐なさといった感情が湧き上がってくるのは自然なことだと思います。これまでできていたことができない、人と同じように動けないと感じるたび、自分がどんどん小さくなっていくような気持ちになることもありました。

そんな中で、私は何か一つでも、「これまでと変わらずにできていること」を見つけたいと、無意識に探していたように思います。大げさなことではなく、本当に小さなことです。

守り続けた、ごく小さな習慣

私の場合は、朝起きたらまず窓を開けて、外の空気を少し吸うことでした。ほんの数秒、ほんの一呼吸でも、それを欠かさないようにしました。体調がどんなに悪くても、起き上がることさえ辛い日でも、何かに掴まりながら、あるいはベッドの中からでも、窓を少しだけ開ける。そして、外の匂いや音を感じる。

これは、体調を崩す前から何気なく続けていた習慣でした。それが、日常の多くの部分が制限されてしまった中で、まるで古い友人のように、変わらずそこにいてくれたのです。

最初は、ただの癖のようなものだったかもしれません。でも、毎日それを続けるうちに、それは単なる習慣以上の意味を持つようになりました。「ああ、今日も窓を開けられた」「これだけは、変わらずにできた」。そのごくささやかな「できた」という感触が、心の中に小さな、本当に小さな光を灯してくれました。

小さな光がくれたもの

それは、失われた日常全体を取り戻すような大きな力ではありませんでした。でも、「自分は完全にゼロになったわけではない」「何もかもが壊れてしまったわけではない」という、静かで確かな感覚を与えてくれたのです。変わり果てた日常の中で、この小さな習慣だけが、過去の自分と今の自分を繋ぐ細い糸のように感じられました。

その糸を手繰るように、少しずつ、できること、心穏やかでいられることを探していきました。ある日はベランダの植物に水を少しだけあげること。またある日は、好きな音楽を一曲だけ聴くこと。どれも、ほんの数分で終わる、簡単なことばかりです。

ゼロでなくて大丈夫

体調が回復してくるにつれて、あの頃の自分を振り返ることがあります。多くのことができなかったあの時期、それでも諦めずにいられたのは、もしかしたらあの小さな習慣が、心のどこかに希望の灯火を絶やさずにいてくれたからかもしれません。

すべてを完璧にこなす必要はない。これまで通りの自分である必要もない。たとえ日常が大きく変わってしまっても、ほんの少しでも、ごく小さなことでも、守り続けられる習慣や、心安らぐ瞬間を見つけること。それは、困難な時期を乗り越えるための、自分だけの小さくて確かな光になるのだと感じています。

このサイトには、体調不良を乗り越える過程で見つけた、たくさんの「小さな希望」の物語が集まっています。一つ一つの光が、誰かの足元をそっと照らす力になることを願っています。