暮らしの中の、心地よい色から生まれた小さな希望
体調と向き合う日々の中で
体調が優れない時、私たちはとかく自身の内側に意識が向きがちです。痛みやだるさ、不安といった感覚に囚われ、世界の全てが灰色に見えてしまうこともあります。かつての私も、まさにそうでした。ベッドの上で天井を見上げ、時間が過ぎるのをただ待つような日々の中で、心は次第に閉じていくように感じていました。外の世界との繋がりが薄れ、日常の色や音が遠ざかっていくような感覚がありました。
ふと目に映った、ささやかな色の光
そんなある日、枕元に置いていた小さな花瓶の存在を思い出しました。数日前に家族が買ってきてくれた、名前も知らない一輪の花。それまで目にも留まらなかったその花が、ふと視界に入ったのです。小さな花びらの鮮やかな黄色が、部屋の薄暗さの中で際立って見えました。
その黄色を見た瞬間、何か温かいものが心に灯ったような気がしました。それは劇的な変化ではありませんでしたが、閉ざされていた心に、一瞬だけ光が差し込んだような感覚でした。色の存在を意識したことなど、それまでほとんどありませんでした。しかし、その時の黄色は、私に「ああ、世界にはまだこんなにも美しい色があるのだな」と静かに語りかけてくれたように感じました。
日常で見つけ始めた「心地よい色」
その小さな気づきをきっかけに、私は少しずつ「色」に意識を向けるようになりました。窓から見える空の色、カーテンの模様、手にするマグカップの色、お気に入りのタオルケットの色。体調が良い日には、ベランダの小さな植物の葉の緑や、空を流れる雲の様々な色合いを眺める時間を持つようにもなりました。
驚いたのは、自分にとって「心地よい」と感じる色がいくつかあることに気づいたことです。例えば、穏やかな青色を見ると心が落ち着き、暖色系の色を見ると少し元気が出るような気がしました。無理に何かをする必要はありません。ただ「見る」だけで、色は私の感情に静かに、そして確かに影響を与えてくれました。
色が教えてくれたこと
体調が優れない時でも、私たちの周りにはたくさんの色が溢れています。それらは、私たちの心に寄り添い、静かなメッセージを送ってくれているのかもしれません。大きな変化はすぐに訪れないかもしれませんが、日常のささやかな色に意識を向けてみることで、心が少し軽くなったり、穏やかな気持ちになれたりすることがあるのだと知りました。
あの時の小さな黄色の花が私に見せてくれたように、日常の中にある「心地よい色」は、私たち一人ひとりの心に灯る、小さくても確かな希望の光なのだと感じています。それぞれの場所で、それぞれの体調と向き合う日々の中で、そっと目を凝らしてみてください。きっと、あなたの心に寄り添う、特別な色が見つかることと思います。そして、その色の光が、明日に繋がる小さな一歩を照らしてくれることを願っています。