心地よい空間作りから生まれた小さな希望
閉ざされた世界の中で
体調が優れない日々が続くと、行動範囲が限られ、一日中を自宅、あるいはベッドやソファの上で過ごすことが増えてまいります。外の世界から切り離されたような感覚になり、時間だけがゆっくりと流れていくように感じられることもありました。部屋の様子も、つい乱れがちになり、視界に入るものが心に重くのしかかるように思えることも少なくありませんでした。
そのような状況の中で、何か一つでも心持ちが変わるきっかけはないか、と漠然と考えていた時期がありました。体調を劇的に改善させることは難しくても、この限られた空間の中で、ほんの少しでも心地よく過ごす方法はないだろうか。
ささやかな一歩がくれた光
大きなことはできない、でも何か小さなことを。そう思ったときに、まず手をつけてみたのが、一番長く過ごす場所であるベッド周りでした。
それまではただ休むだけの場所でしたが、目覚めたとき、あるいは眠りにつく前に、少しでも心安らぐ空間にしたいと考えました。手触りの良い小さな布を敷いてみたり、枕元にお気に入りの小物を一つだけ置いてみたり。すぐにできる、本当にささやかな変化です。
しかし、朝、その布に触れたときの感触や、視界に入る小物の存在が、何だか気持ちを少しだけ明るくしてくれるように感じられたのです。それは劇的な変化ではありませんでしたが、確かに日常の中にほんの少しの「心地よさ」が加わった瞬間でした。
その小さな成功体験から、他にもできることはないかと考えるようになりました。窓辺に小さな観葉植物を置いてみる、お気に入りの香りのアロマスプレーを使ってみる、飲み物を飲むときはお気に入りのマグカップを選ぶようにする。一つ一つは取るに足らないようなことかもしれません。ですが、それらの小さな工夫を重ねるうちに、部屋全体が、そしてそこにいる自分の心持ちが、少しずつ変わっていくのを感じました。
「今、ここ」でできることへの気づき
体調が思うように回復しないとき、先のことを考えると不安になったり、過去の良い状態と比べて落ち込んだりすることがあります。しかし、身の回りの空間を少し整えるという行為は、「今、ここ」でできることに目を向けさせてくれました。
大きな目標に向かって進むエネルギーがないときでも、目の前の小さな範囲なら、少しだけ動いて変えることができます。そして、その小さな変化が、自分自身に心地よさをもたらすという実感は、失われかけていた自分への肯定感や、日々の生活を慈しむ気持ちを取り戻すきっかけとなりました。
完璧な状態を目指す必要はありません。できる範囲で、心地よいと思えるものを一つ加える、あるいは一つ取り除いてみる。その小さな行動が、閉塞感を感じる日々に、思わぬ光を灯してくれることがあるのだということを、身をもって知りました。
体調と向き合う日々は、見通しが立ちにくく、不安が募ることもあるかもしれません。しかし、そんな中でも、自分の心を少しでも穏やかに、前向きに保つための「小さな光」は、意外と身近なところにあるのかもしれないと感じています。この場所で、皆さんが見つけたそれぞれの「小さな光」に触れることが、誰かの希望に繋がっていくことを願っています。