比較を手放し、今の私に見つけた小さな光
体調の変化と、過去の自分との比較
体調を崩してから、それまでの当たり前が失われていく中で、心に重くのしかかるものがありました。それは、「前はこうだったのに」という過去の自分との比較です。
かつては簡単にできていたこと、例えば長時間活動することや、趣味に没頭すること、友人と夜遅くまで語り合うことなどが難しくなりました。体力や気力の低下を感じるたびに、輝いていた頃の自分を思い出し、「どうして今はこんなにできないのだろう」と自分を責めてしまう日々が続きました。
鏡に映る姿も、以前とは違うように見えました。心の中では、あの頃の自分に戻りたいという強い願いと、今の自分を受け入れられない苦しさがせめぎ合っていました。過去の自分という、もうそこにはいない存在と比べては、落ち込み、自信を失っていきました。
ある日気づいたこと
そんな暗いトンネルの中にいるような日々の中で、ある時ふと立ち止まる機会がありました。それは、何気なくつけていた体調の記録を見返していた時のことです。良くなったり悪くなったりを繰り返しながらも、ほんの少しずつですが、できることが増えていたり、心穏やかな時間が増えていたりすることに気づいたのです。
その時、強く心に響いたのは、「過去の自分は、確かに自分の一部だけれど、今の自分とは違う存在なのだ」ということでした。当たり前のことかもしれませんが、それを心から理解した瞬間でした。過去の自分という輝かしい幻影と、現実の今の自分を比べて一喜一憂することは、今の自分を否定することと同じではないかと思ったのです。
今の自分の中に見つけた小さな光
過去との比較を手放してみると、不思議と目の前の世界が少し違って見え始めました。かつては「できないこと」ばかりに目がいっていましたが、「今の自分にできること」に意識を向けられるようになったのです。
例えば、以前のように遠くまで出かけることは難しくても、近所の公園までゆっくり歩くだけで、季節の移り変わりを感じられるようになりました。道端に咲く小さな花の色や、木々の葉擦れの音、風の匂いなど、慌ただしい日々の中では見落としていた小さな美しいものに気づけるようになりました。
また、体力が限られているからこそ、一つ一つの行動をより丁寧に、感謝して行うようになりました。一杯のお茶をゆっくり味わう時間、肌触りの良いタオルに触れる感触、窓から差し込む温かい光。これらは、以前の自分なら意識することすらなかったささやかなことですが、今の自分にとってはかけがえのない喜びとなり、「小さな光」のように感じられるようになりました。
比較ではなく、今の自分を生きること
体調の変化は、私たちから多くのものを奪っていくように感じられるかもしれません。しかし、その一方で、立ち止まり、自分自身と丁寧に向き合う機会を与えてくれたとも言えます。過去の自分と比べるのではなく、今の自分の状態をありのままに受け入れ、「今の自分にできること」の中で楽しみや喜びを見つけていくこと。それが、辛い状況を乗り越えるための、そして回復していくための、大切な一歩になることを体験を通して学びました。
「みんなの小さな光」は、それぞれの人が、それぞれの「今」の中で見つけた光を持ち寄り、分かち合う場所です。ここでの繋がりが、過去に囚われず、今の自分を肯定しながら前を向いていくための温かい力となれば嬉しく思います。