指先から生まれた小さな希望
体調が優れない日々の中で
体調不良が続くと、日々の生活は思うようにいかなくなるものです。以前は当たり前のようにできていたことが難しくなり、時間を持て余しながらも、心の中には焦りや不安が募っていく。そんな時期は、「自分は何のためにここにいるのだろう」「この先どうなるのだろう」といった、答えのない問いが頭の中を巡りがちでした。
大きな目標を立てる気力も体力もなく、ただ過ぎていく時間の中で、漠然とした無力感を感じていました。何かしたい、でも何もできない。そんな葛藤の中にいました。
模様を描く静かな時間
そんなある日、特別なきっかけがあったわけではありませんが、手元にあったノートとペンで、ごく簡単な模様を繰り返し描いてみることにしました。それは、誰に見せるわけでもない、ただの線と図形の組み合わせでした。丸、四角、曲線。意味のない、同じような模様を、ただひたすらページの一角に描き始めたのです。
最初は、本当に単なる気晴らしのつもりでした。しかし、一本の線を引くこと、次の線に繋げること、その単純な繰り返しの行為に没頭する時間が、驚くほど心を落ち着かせてくれることに気づきました。体調への不安や、将来への心配といった、頭の中をぐるぐる駆け巡っていた思考が、一時的に遠ざかるのを感じたのです。
ペン先が紙に触れる音、指先のわずかな動き。その全てが、不思議と「今、ここにいる」という感覚をはっきりとさせてくれました。何も生み出せていないと思っていた自分でも、確かにこの手で何かを形にしている。たとえそれが何の変哲もない模様であっても、その事実がささやかながらも確かな光のように感じられました。
小さな「できた」がくれたもの
ノートのページに、描いた模様が増えていくたびに、ほんの少しですが達成感がありました。これは、体調が悪くなってからずっと感じられずにいた感覚でした。大きなことではなくても、「自分はこれをやり遂げた」という小さな「できた」。それは、いつの間にかすり減っていた自己肯定感を、ごくわずかですが回復させてくれるきっかけになったように思います。
描いた模様は、決して立派なものではありません。でも、その一つ一つに、あの時ペンを動かした自分の時間、集中できた静かな時間、そして「何かを生み出したい」という微かな希望が詰まっているように感じています。それは、体調が優れない中でも、自分の指先から生まれた、自分だけの小さな宝物です。
希望は、すぐそばにあるのかもしれない
体調不良と向き合う中で、失うものは多いように感じてしまうかもしれません。でも、探してみると、意外な場所、あるいは自分の手の届く範囲に、心を穏やかにしたり、前向きな気持ちを取り戻させてくれたりする「小さな希望」があるのかもしれません。それは、誰かに褒められるようなことや、大きな変化をもたらすことではなくても、自分の内側に確かな光を灯してくれるものだと感じています。
この体験が、もし今同じような状況にある方々の心に、ほんの少しでも温かい光を灯すきっかけになれば嬉しいです。そして、このサイトを通して、皆さんの見つけた「小さな光」を分かち合えることの温かさを、改めて感じています。