窓越しの光と、少しずつ変わる景色から
体調が優れない日々が続くと、自分の世界がとても小さく感じられることがあります。家の外の世界から切り離されてしまったような孤独感や、この状況がいつまで続くのだろうという不安に心が塞ぎ込んでしまうこともありました。
そんな時、私の唯一の外との繋がりは、部屋の窓から見える景色でした。最初はただぼんやりと眺めているだけでしたが、ある時、ふと視線を止めてみたのです。すると、昨日まで気づかなかった小さな変化があることに気づきました。
窓越しの小さな発見
窓から見えるのは、ごくありふれた住宅街の風景でした。通りを行き交う人々、向かいの家の庭、遠くに見える木々。特別なものは何もありません。
しかし、毎日同じ景色を見ているうちに、驚くほど多くの変化があることに気づかされるようになりました。たとえば、近所の桜の木が、蕾をつけ、淡いピンクの花を咲かせ、やがて葉桜になる様子。あるいは、毎日同じ電線にやってくる小さな鳥が、何か楽しそうに鳴いている声。雨上がりの空にかかる、薄くても確かにそこにある虹。
体調が不安定で先の見通しが立たない中で、これらの小さな変化は、私の心に静かな波紋を広げました。特に、季節が移り変わっていく様を窓越しに感じられたことは、大きな慰めになりました。
季節が教えてくれたこと
春には、枯れ木の枝先に緑の芽吹きを見つけました。それは、どんなに寒く厳しい冬の後にも、必ず新しい命が芽生えることを教えてくれているようでした。自分の体調がなかなか良くならず、心が枯れてしまいそうな時でも、希望は確かに存在するのだと、その小さな芽が語りかけているように感じたのです。
夏には、強い日差しが木々の緑を輝かせ、夕立の後の涼しい風が吹き抜けていきました。自然の力強いエネルギーに触れることで、少しだけ自分の中にも力が湧いてくるのを感じました。
秋には、木々が少しずつ色づき始め、やがて鮮やかな赤や黄色に変わっていく様を見守りました。美しい変化の後に葉が落ち、冬に向けて準備をする自然の姿は、無理せず、自分自身のペースで変化を受け入れていくことの大切さを教えてくれたように思います。
冬の澄んだ空気の中で、遠くの山の稜線がはっきりと見える日。雪が静かに降り積もり、世界を白く覆い尽くす日。静かで厳しい季節の中に、張り詰めた心が緩んでいくような静けさや、新たな始まりへの期待を見出すこともありました。
日常の中のささやかな光
窓越しの景色から得られたこれらの気づきは、私の日常にささやかな光を灯してくれました。体調はすぐには変わりませんでしたが、外の世界の大きな出来事に目を向けるのではなく、身の回りの小さな変化に心を寄せることで、塞ぎ込んでいた気持ちが少しずつ和らいでいくのを感じました。
回復への道のりも、劇的な変化ではなく、きっとこうした小さな「少しずつ」の積み重ねなのだろう。そう思えるようになったことも、窓越しの景色が教えてくれた大切な学びです。
体調が優れない時でも、身近な場所に、心を慰め、希望を与えてくれる「小さな光」はきっと存在しています。それは、窓から見える景色だったり、誰かの優しい言葉だったり、一杯の温かい飲み物だったりするかもしれません。
このサイトで、皆様がそれぞれの場所で見つけた「小さな光」を分かち合うことで、互いの道を照らし合うことができれば幸いです。