みんなの小さな光

ゆっくり散歩で見つけた小さな光

Tags: 回復期, 日常の発見, 希望, 体調管理, 散歩

体調を崩してからというもの、以前のように外に出るのも億劫になり、家の中で過ごす時間が増えました。カーテンを開けることすら億劫に感じる日もあり、目の前の世界が小さくなっていくような感覚がありました。体力の低下はもちろんですが、それ以上に、気持ちの面で「自分には何もできない」という諦めのような感情が強くなっていたのかもしれません。

一歩踏み出すまでの時間

そんな日々の中で、かかりつけの医師から「無理のない範囲で、少し外に出てみてはどうか」という提案がありました。最初は「そんなこと言われても、体が動かないのに」と心の中で反発する気持ちもありました。しかし、ずっとこのままではいけないという思いもあり、本当に家の周りをほんの少しだけ、数分間だけ歩いてみることにしました。

最初の一歩は、鉛のように重く感じられました。息切れもするし、すぐに疲れてしまう。それでも、毎日決まった時間に、玄関を出て数メートルだけ歩くことを日課にしてみました。体調の波があるため、歩ける距離は日によってまちまちでした。全く歩けない日もあれば、少しだけ足を延ばせる日もある。そんな状況でしたから、「もっと歩かなければ」という焦りを感じることもありました。

日常の中に隠れていた小さな発見

それでも、ゆっくりと、そして注意深く周りを見ながら歩くうちに、今まで気づかなかった小さなものたちが目に入り始めました。

ある日、ふと足元に目をやると、アスファルトの隙間から小さな草が生えているのが見えました。踏まれても、コンクリートに囲まれても、そこから一生懸命に伸びようとしている姿に、何だか胸を打たれたのです。

また別の日は、公園の木にやってくる小鳥たちのさえずりが、以前よりずっと鮮やかに聞こえるように感じました。家の中にいる時は、外の音はただの騒音に聞こえることもあったのに、実際にその場に立ってみると、鳥の声や風の音、遠くで遊ぶ子供たちの声など、一つ一つの音が心地よく響くように思えました。

季節が少しずつ移り変わっていく様子も、外に出ることで初めて肌で感じられるようになりました。葉の色が変わったり、新しい花が咲いたり。それは劇的な変化ではありませんでしたが、確実に時間が流れていること、そして自分の周りの世界は停滞しているわけではないことを教えてくれました。

そして、一番嬉しかったのは、ほんの少しでも長く歩けた日の、体の中に感じる微かな達成感でした。「今日は昨日より一回り遠くまで行けた」とか、「息切れせずにこの距離を歩けた」といった、本当に小さな「できた」の積み重ねが、失いかけていた自信を少しずつ取り戻してくれるような気がしました。

小さな一歩が繋げてくれたもの

これらの経験は、決して体調が劇的に回復したという話ではありません。今も体調に波はありますし、思い通りにならないこともたくさんあります。しかし、あの時、重い体を引きずるようにしてでも外に出て、ゆっくりと歩いてみたことで、日常の中に隠れていたたくさんの「小さな光」に気づくことができました。

大きな目標に向かう力が出ない時でも、目の前の小さな一歩に集中すること。そして、その一歩の中で見つけられるささやかな発見や変化を大切にすること。それが、辛い状況の中でも心を保ち、前向きな気持ちを育むための大切な手がかりになるのだと感じています。

この体験を通じて、希望は遠いところにあるのではなく、意外と自分のすぐそば、普段見過ごしてしまいそうな日常の中に隠れているのかもしれない、と思うようになりました。そして、その小さな光を見つけるためには、自分自身が少しだけ視点を変えたり、ほんの小さな行動を起こしてみたりすることが必要なのだと気づかされました。

もし、今、辛さの中にいて、何もかもが灰色に見えているとしても、ほんの少しだけ、心の窓を開けてみてください。きっと、あなただけの「小さな光」が、すぐそばで見つかるはずです。